植草甚一スクラップ・ブック 11 カトマンズでLSDを一服』(晶文社
スクラップ・ブックと呼ばれる所以は、当時の「エスクァイア」や「プレイボーイ」などアメリカの雑誌の記事から植草甚一がこれは面白い、と思った物を部分的に引用したりしながら紹介しているから。で、今回のテーマはLSDを始めとする麻薬関連のお話。麻薬がどんな風に受容されていったのか、どんな風に、誰が使っているのか、使うとどんな風になるのか、などをテーマにした記事を引用しながら、ヒッピーの文化などを紹介。情報の少なかった時代、今アメリカで何が起こっているのかをわかりやすく、親しみやすい語り口で語ってくれたのが植草甚一、と言う事なのだろう。普段縁のない世界(=麻薬)の話なのでとても新鮮で面白かった。
牛腸茂雄牛腸茂雄作品集成』(共同通信社
牛腸茂雄自身が自分の作品について的確な表現をしている。「見過ごされてしまうかもしれないぎりぎりのところの写真」だが、「じっくり何度もみることで、じわじわ味わいが、でてくる。」そんな牛腸の作品をじっくり見直して見ると、日常のスナップショットである「日々」でも有名なポートレイト集「Self and Others」でも、焼きは絶妙だし質感(テクスチュア)がすんごい。当たり前の事だけど作品の味わいを基礎的な技術力が支えている事を思い知る。この本には雑誌に発表した作品も掲載されているし、一部コンタクトプリントも載っている。「Self and Others」での有名な一枚(本書の表紙にも使われている)のシーンでどうシャッターを切っていたか、がわかるのは非常に面白い。他のコマはまったく使えなそうな写真なのだけれど、あの写真だけはコンタクトプリントでも目を引く。前後のコマはダメダメなんですよ。写真やってればわかると思うんだけど、その偶然の重なり具合というか、ほんのちょっとタイミングがずれただけで使い物にならなくなる危うさみたいなものがコンタクトプリントを見ると丸わかりなのです。そういう生々しさにちょっとドキドキした。

 
カトマンズでLSDを一服 (植草甚一スクラップ・ブック) 牛腸茂雄作品集成