『アイデア idea 原研哉のデザイン』
銀座松屋リニューアル、無印良品愛知万博、などなど勢力的に活動しているデザイナー。この雑誌、何の気なしにレジに持っていったら3000円とか言われてビックリ仰天だったのだが、今日読んで納得。3000円で躊躇して買わない方が損をしただろう、と今では思っている。原研哉も「視点」や「メタ認知」の重要性を彼なりの言い方で語っている。やはり物を見る「視点」はジャンルを問わずとても大切だということか。そういう意味で本当に汎用性の高い思考のフレームワークを鍛えてくれたクリ塾には感謝してもしきれない。

紙の白
 
書籍は「情報の彫刻」のようなものだと考えている。
メディアの多様化によって、それぞれのメディアは
その存在意義を問い直されている。
書籍は単に紙に刷られたデータの束であることは
もはや許されず、その物質性がいかに活用されたかという
観点が問われるようになるだろう。
これは書籍にとっては素敵な課題である。
人と情報との関係は人と食物の関係に似ている。
卵を5万個もらってもぴんとこないが、
1個の卵になら人は想像力を働かせられる。
ゆで時間やエッグスタンドにこだわり、
せっせと殻をむき、デザインのよいソルトシェーカーで
塩をふりかけて人はそれを賞味するのだ。
そういう意味で、ほどよい量に小分けされ、
物質性をもった情報として、
書籍はさらに進化していくだろう。

結局行き着く先は二極化ではないか。紙に刷られたデータの束でしかなかったものは、データとして流通するようになった方がメリットは大きい。こう言うと露骨に嫌な顔をして本と言う物質性にこだわる素振りをする人も多いが、電子書籍の普及によって今の書籍がなくなるわけでは無いと思う。それにそれこそ装丁にこだわった美しい本などドンドン減っているのが現状ではないか。古本屋に行くと箱入りの本が当たり前のように並んでいるが、今そこまでこだわった装丁の本がどれほど出ているというのか。むしろ電子書籍の普及は書籍から駄本を減らし、本当に良い本が増えるかもしれない。書籍としてあえて出版する以上は「物質性を如何に活用するかという観点」が今以上に重要視されるだろうから。そういう可能性も考えた方が良いし、大量の駄本出版、返品、裁断という不毛極まりないサイクルをぶち壊すという環境への意義も大きい。とはいえ、端末を見る限り普及はもう少し先の話なのだが・・・。