片山健の挿画

ルイス・キャロル不思議の国のアリス』(集英社文庫
集英社文庫には下らない本も多いけど小粒でもピリリと辛い本も多いのです。これなんかその典型。詩人の北村太郎が訳したアリス。恥ずかしながらアリスとオズを混同していて読みながらブリキの兵隊出てこないじゃんとか思ってしまった。アリスはウサギを追って穴に飛び来んで、でっかくなったりちっちゃくなったりする方のお話。これは少女アリス・リデルの為に書かれたお話で、その辺を踏まえて語りかける様に訳されている。

 アリスは、あーあ、つまんないなと思い始めていたんだ、土手に姉さんと並んですわってばかりいて、なんにもしないものだからさ。一回か二回、姉さんの読んでる本をのぞきこんでみたけれど、絵もなけりゃカギかっこでくくった会話もなくて、文章べったり。「絵ぬき、会話ぬきの本なんて、どこがおもしろいんだよ」とアリスは、声に出さずにつぶやいた。
 
 
不思議の国のアリス」より

シャルル・ぺロー『長靴をはいた猫』(河出文庫
童話は編纂者によってちょっとずつ結末とかが変わってくる。アンデルセン、グリム、そしてこのシャルル・ぺロー、同じお話でもそれぞれ微妙に違う訳。それがさらに子供向けにアレンジされて人畜無害なお話として絵本とかになっていくわけだ。でも一時期グリム童話の本が流行ったみたいに元々は血なまぐさくてセクシャルで残酷な民話だったりする。赤頭巾ちゃんなんかは裸になってベットに入ると言う露骨な性的暗示を伴っていて、結末はあっさりと狼に喰われてしまう。狼(=男)に喰われる処女喪失の話とも読めるし、赤頭巾の赤と言う色が血の象徴だなんて話もある。ぺローの童話には各話の終わりに教訓がついているのだけれど、赤頭巾ちゃんの教訓は可愛らしい女の子はどんな相手と口をきいても間違いのもとになるから用心しろと言うもの。かなり面白いし、片山健による挿し絵も最高。ISBN:4309460577

ふしぎの国のアリス (集英社文庫)