百間。

内田百間内田百間集成6 間抜けの実在に関する文献』(ちくま文庫
弟子や恩師、森田草平などなど、との交遊録。帯には「間抜けは単なる観念でも無く空想でもない。」と書かれており、相変わらずの皮肉屋ぶり。以下に引用する「忘却論」には全面的に賛成、というか今までそうして来たなぁと感慨深い。今だって、濫読しているけれど、読んだ端から忘れている事の方が多い。が、それでも良いのだ。多分。

 覚えていられなかったら忘れなさい。試験の答案に書くまで覚えていればいいので、書いてしまったら忘れてもいい。しかし覚えていない事を忘れるわけには行かない。知らない事が忘れられるか。忘れる前にはまず覚えなければならない。だから忘れる為に覚えなさい。忘れた後に大切な判断が生じる。語学だけの話ではない。もとから丸で知らなかったのと、知っていたけれど忘れた場合と、その大変な違いが色々忘れていく内に分かって来るだろう。
 
 
「忘却論」より



間抜けの実在に関する文献―内田百けん集成〈6〉   ちくま文庫