松浦寿輝『青の奇跡』(みすず書房
相変わらず心地いい文章で、読みたい本がどっと増えました。そして、まだ若いのに、下の文章に共感してしまいました。余りに多忙で「今ここ」を生き抜くのに必死だからなのかな。

 

つい数年前まで、わたしの四十数年の人生はひと連なりの緊密な連続体のように見えていたのに、今わたしは、結局自分には「今ここ」の現実しかなく、「四十年前」も「五年前」も「去年の今頃」も「昨夜」もことごとく自分と等距離に位置していて、そのすべてがはたして本当に在ったのかどうか、しかと断言できないような心許なさを感じるのだ。
 
「下天の内をくらぶれば」P.339-P340より


青の奇蹟