堀江敏幸『一階でも二階でもない夜』(中央公論新社
だるい気持ちも吹き飛ぶ至福の時。昼下がり、まったりとページを繰るという贅沢。引用されている詩もなかなか良くて読みたい本が増える。もう安定感があってこの人の本はハズレないだろうなぁと、安心して買える&読める。この本は装丁が非常に美しい。カバー、帯、表紙の絵、全て良い。品のある造本。

眼とは
  
溢れ出る泉

 
 
 
だがどこから湧き出るのか?
  
もっとも遠いところより遠くから
  
もっとも低いところより低くから
 
私は思う、自分はもうひとつの世界を飲んだのだと
 
 
 
本書「すいようえき」よりフィリップ・ジャコテの短詩

死んでしまったものの、失われた痛みの、
  
ひそやかなふれあいの、言葉にならぬ
  
ため息の、
  
灰。
 
 
 
本書「断ち切られた夢」よりウンベルト・サバの詩

 
一階でも二階でもない夜―回送電車〈2〉