『澁澤龍彦全集13 胡桃の中の世界・貝殻と頭蓋骨・幻想の肖像』

 
 昨日のモマ展でも思ったけれど何だか現代美術(インスタレーションとか)が妙に疲れる今日この頃。今の所落ち着いた気分で見れるのはフォンタナがキャンパス切り裂いたくらいまでかしら。感性の磨耗?保守的?でもどんどん自分の関心はイタリアルネッサンスやフランドル絵画、など古典的な方向へ向いていく。宗教画とか面白いし、美しいし、奥が深いし、興味がつきない。という訳で「幻想の肖像」は自分にとって非常に刺激的。ヴェラスケスの現存する唯一の裸体画(それも後ろ向きで横たわっているという珍しい裸体画)の事が載っていたり、新しい発見が多かった。ISBN:4309401694
 もう一つ、雑学的なお話。女性は自らを客観視することが苦手、という話を女流作家の書評に書いていた。これ自体はステレオタイプな発言だけれど、これを踏まえて、精神に異常をきたす時にも男性と女性では違いがある、という話が面白かった。女性の場合は別人格は内面に形成されて多重人格者になるケースが多く、男性の場合はドッペルゲンガーや影、すなわちもう1人の自分が外部にいて、その存在におびえたり、と言った症状が多いとか。ドッペルゲンガーは文学でもよく取り上げられる主題。ざっと思いつくだけでもポーの『ウィリアム・ウィルソン』、オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』、ナボコフの『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』などが挙げられる。