内田百間『内田百間集成13 たらちおの記』(ちくま文庫) ISBN:4480038930

久しぶりに百間を読む。それにしても百間の「間」の字*1が出ないのが残念。とはいえ郷里岡山の百間川が名前の由来なので「百間」という表記はまだ許せる範囲。父の事、母の事、郷里岡山の事を書いたエッセイ集で百間の郷里岡山への思い入れが伝わる。が、生前岡山へはほとんど足を踏み入れなかったらしい。恩師の葬儀の時だけ、それも焼香を済ませたら東京へとんぼ返り、というもの。天の邪鬼としての面目躍如か。

たらちおの記―内田百けん集成〈13〉 (ちくま文庫)


田村隆一『続・田村隆一詩集』(思潮社ISBN:4783708770

なんとなく久しぶりにかっこいい言葉に触れてみたくて手に取った。後半に日記が収録してあり第一詩集『四千の日と夜』についての記述が興味深かった。

ぼくの最初の詩集に、『四千の日と夜』がある。日本の敗戦からほぼ十一年たった一九五六年の三月に刊行されたもので、もうそのときから十八年にもなる。(中略)ノアの洪水は四十日四十夜だったが、ぼくが経験した「洪水」は、四千の日と夜であった。そして、その洪水のあとに、まだぼくはいる。ぼくの箱舟には、なにが入っているのだろう?

*1:正しくは門に「日」ではなく「月」