松浦寿輝

松浦寿輝『青天有月』(思潮社
非常に美しい本。光を巡って書かれたエッセイ。露出計を持って町中の色んな場所の明るさを計測したり、というのは冷静に考えるとちょっと変な人。でも、この本は本当に素晴らしい。折に触れ何度も読み返したい。ISBN:4783715742

「光景」が出現する。わたしの見たいのは文学的な感傷にたやすく汚染されうる「風景」ではない。いわんや鬱陶しい「情景」などには何の興味もない。「光景」がわたしの眼の前にあり、絶えず伸び縮みする無数の光の線分がわたしの躯の周りをゆるやかに旋回している。「光が回っている」。そんなただなかに身を置いていて、人はどうして空を仰がずにいられるだろうか」

「空を仰ぐこと」より